前回の続き。
(本日の画像はクリックすると別窓で拡大表示します) 操舵室の床面は照國丸単体の資料は無かったのですが、同時代の浅間丸級や後年の新田丸が グレーチングなので一面グレーチングとして処理します。具体的にはファイブスターの1/350艦艇用グレーチングのエッチング(FS351047)を貼って表現しています。
テレグラフは5基付きますが役割は異なります。靖国丸の艤装図では操舵室内の2基がエンジンテレグラフ(ET)、外側の2基は緊急のステアリング用と入出港の際に使われるドッキング用の併用(S&D)、右舷(画像手前)側の端にあるのが錨作業時に用いるアンカーテレグラフ(AT)で、指示する先も異なります。資料や浅間丸の写真を見る限り若干仕様が異なっていたようですが、詳細不明のため全て同じ形としています。
操舵室の中央に磁気コンパスがありますが、この時代の船は既にジャイロコンパスも標準装備で、そのレピーター(表示器)は操舵機に直接装備されるか、そうでない場合は操舵室内のどこかに有りました。照國丸がどうだったかは不明ですが、同時代の浅間丸級が操舵機とは別の左舷側の壁面近くにあったので、この製作でもそれにならって処理しています(上画像出入口と窓の間の半円状のモールド)。
右舷側の壁で仕切られた部分は海図台で、靖国丸はこの位置にあり照國丸も同様と判断しています。操舵機背面の壁中央にある格子状のモールドはフラグロッカーで、これは3Dプリンタでそれらしいものを出しています。
製作は操舵室の天蓋を貼って船室の裾を引き、ドアを付けて形にしたところまで。同時に船室背面の大型の天窓と左舷側の角にある空中線用の塔を並べて囲った部屋も付けています。また外側のブルワークの上端は木地のままなのでウッド系の色を塗っています。
反対側はこんな感じです。以降側面や前面の壁面を取り付けます。
上で操舵室の外側のブルワークの上端は木地のままと書きましたが、この時代の商船は操舵室周辺の構造物壁面が内外共に木張りで被覆されているのが一般的だったそうです。その上から白塗装するため他と区別が付かなくなるだけで無塗装の場合もあり、実船写真や着色葉書・ビルダーズモデルなどで操舵室周辺や張り出しが濃い色に見える船があるのはこれが理由です。そのため厳密にはこの周辺は木張りモールドを付けてグレーを流すのが実物に近い形ですが、全体を見た場合に違和感も半端ないためモールドそのものを省略しています。なお、これは現在の氷川丸でも見る事ができます。
保存船氷川丸の船橋上部背面
(2002年08月31日撮影)
赤矢印より上の操舵室と同一レベルにある
張り出しやブルワーク、船室は表面が木張りになっています。 以下次回。