前回の続き。
(本日の画像はクリックすると別窓で拡大表示します) ボートデッキに各種装備品を付け、船体中央部がようやく形になりました。ボートデッキの複雑な手すりをどうやって表現するかで予想外に手間取りましたが、この製作は3Dプリンタの実習も兼ねているため何がどこまで出来るかを見極めるのにも時間が掛かっています。上の画像では煙突も含めた大半の装備品が3Dプリンタ+UVレジン製で、これまでの製作よりはるかに精度の高いものになりつつあります。
照國丸級のボートダビッドは Welin Maclachlan式重力ダビッドで、操作用のウインチが下のボートデッキにあります(上画像青矢印)。ウインチの詳細仕様はわからず、アンダーソニアン図書館のビルダーズモデルの不鮮明な写真からそれらしく作ったもので確証はありません。氷川丸級のダビッドも同型式ですが、操作ウインチは上のボートデッキハウストップにあり仕様も異なるようです。
それで機械で操作するダビッドの場合、ダビッドと救命艇の間は滑車と滑車ではなく金具でつなぐ形式が多いようです。この製作でも製作上の都合でかなり簡略化しましたが金具でつなぐ形式(上画像赤矢印)としています。なお旧海軍艦艇のカッターは人力操作で、ゆえにダビッドとカッターの間は滑車でエッチングもそのようになっていますが、商船の場合は厳密を期するのであれば注意が必要な部分です。ハセガワの350氷川丸の専用エッチングは滑車とも金具ともつかない表現に留まっています。
練習帆船初代海王丸のダビッド
人力操作の5号艇はダビッドとの間が滑車(青矢印)、機械操作の1号艇は金具(赤矢印)
(2012年11月02日撮影) 救命艇とダビッドの周囲にデッキライトがあります。照國丸級の場合大型のものがボートデッキの縁に片舷当たり3基(上画像赤矢印)、小型のものがボートデッキハウストップと一等ベランダの上に5基あります(青矢印)。実船写真では傘の部分が濃く写っていますが色はわかりません。この製作では船の科学館所蔵の新田丸のビルダーズモデルに於いて黒に近いグレーで塗られていることから、同様に処理しています。
ただし、照国丸の蝕雷沈没時の写真では大型のデッキライトは船尾のもの以外は写っていないようにも見えます。1等ベランダの角端の小型のライトは基部しか写っていない-上部が取り外し式だったと考えられる-写真が存在する(The Travel bulletin1936年1月号
p7「Children's Life Aboard Ship」)ため、大型もそうだったとも考えられますが確証はありません。この製作では1940年頃と考えられる靖国丸の写真に写っていることから同様に装備しています。
ボートデッキの後端には固定式の天幕支柱があり、これも3Dプリンタで製作しています。天幕の下1等ベランダの隔壁外側には椅子かベンチがあったようで、The Travel bulletin1937年4月号(No.142)に上画像緑矢印の位置と方向で撮影された靖国丸の船上写真が掲載されていて、船客が椅子を並べて休息している姿が写っています。照國丸は触雷沈没時の写真からはベンチのようにも見えますが、はっきり判らないためベランダの椅子を3脚並べる形に留めています。
左舷側はこんな感じです。
中央部はまだ少し手を入れる部分がありますが、その後はあまり上手くできなかった船尾楼甲板の支柱と一体化した手すりを再度作り直すつもりです。
以下次回。
なお、来週の記事更新は都合によりありません。次回更新は12/17以降の見込みです。